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ジェフ・ベゾス 果てなき野望-アマゾンを創った無敵の奇才経営者 ブラッド・ストーン

AmazonのCEOジェフベゾスの本を読んでみた。長かったけど、とても面白かった。だから自分はAmazonを使うんだよなと、何度も頷かされた。

徹底した顧客第一主義

Amazonの経営理念は徹底した顧客第一主義。これは本の最初から最後まで一貫して述べられていた。Amazonの歴史を振り返り、社内外の人間関係など複雑な過程を経て、大企業に成長していく様が描かれているが、ベゾスの顧客第一主義だけは、創業から今日に至るまで変わっていない。ほんとにブレない。例えばマーケットプレイスを始めた時にはやっぱり、仕入先からの反発はもちろん、社内からの反発も強かった。それは当然、新品の横に格安の中古書籍が並べてあれば、多くの人は中古書籍を買うに決まってる。それでも顧客に選択の自由を与えた。その結果マーケットプレイスはAmazonの売上の大きな部分を占めるまでに成長した。もちろんベゾスの目的はマーケットプレイスで大きな売上を上げることではない。ベゾスが目指すエブリシングストアへ向けて信じることを貫いた結果に過ぎないんだと思った。

今では当たり前になっているレビュー機能だが、当初は出版会社からレビュー機能について『君の仕事は本を売ることであって、本にケチをつけることではない』と批判浴びた。しかしベゾスは『我々はモノを売って儲けてるんじゃない。買い物についてお客様が判断する時、その判断を助けることで儲けているんだ。』と答えた。僕もAmazonを使うシーンを振り返ってみるとAmazonに判断を助かられているということがよくある。ベゾスの理念は海を超えた日本に住む僕にまで作用しているんだと思うと凄い。

AWS

AmazonがAPIを公開したのはティム・オライリーの助言がきっかけだった。「会社というのは、新しい技術から何が得られるかを考えるだけでなく、どうすれば他者がいろいろできるようになるかも考えるべき」「オンラインストアを区分けし、他のウェブサイトが区分けされた部分を活用できるようにすべきだ」っといったものだ。 それがきっかけとなりAPIが公開され、のちのAWSというクラウドサービスに繋がっていく。ベゾスは「Amazonがやるべきなのはプリミティブ(コンピューティングの構成要素)を作ることで、それ以外は邪魔をしないようにならなければならない。言い換えると、原子のようにシンプルな要素にインフラストラクチャを分解し、社外の開発者ができる限り自由にアクセスできるようにする。」という理念の下、サービスを開発するチームを設置していった。 また、需要変動にサービスを追従できる、無限にスケールアップできるような設計しろと部下に指示し、アーキテクチャの設計まで口を出していたらしい。部下はベゾスがどれ程おおきなことを考えていたのか理解できず、ベゾスを怒らせてしまうこともあったようだ。 また、価格についても、社内で意見が別れたが、ベゾスの意見で、赤字が長期に渡るような低価格が設定される。この理由としてベゾスはAppleのiPhoneを例に出した。iPhoneは利益率が高いからAppleに大きな利益をもたらしたが、今では価格競争に飲まれ、Androidの追随を許すことになっている。それなら始めから低価格、低利益率で打って出ることで、競合に付け入る隙を与えないようにしたのだ。 その結果、今日のAWSはベゾスが最初に掲げた理念の通り、社外の開発者や企業がWebサービスを使い、スケーラブルで優れたアプリケーションを開発できる、世界的大企業と寮に住む大学生が同じコスト構造を持ち、スタートアップや小企業が大企業と、互角に戦える場となった。プラットフォームを握ったのである。

ブラック企業とは何なのだろうか

最近日本ではブラック企業という言葉がよく聞かれる。低賃金で残業代が出ない、長時間労働、福利厚生を無いなどという、会社に対する不満が主な原因だと思う。その一方で、なぜ日本にはGoogleやApple、Amazonといった世界的な企業が生まれないのかと嘆く声もよく聞こえる。 しかし今回読んだ本に描かれているAmazonの労働環境や、以前読んだアップル帝国の正体に描かれているAppleの労働環境は、間違いなく日本ではブラックと言われ、世間から叩かれるようなものだった。Amazonは給料については具体的には触れられていないが、家には全く帰らず仕事に没頭したり、ベゾスにはひどい言葉を浴びせられながらも働き、ベゾスの理念を実現すべく働いき、今のAmazonを作っている。人の入れ替わりも激しい。この本に出てくる登場人物は入れ替わりが激しすぎて、正直ほとんど覚えられなかった。しかしそれでも、Amazonは世界的企業と賞賛され、就職を希望する人が後を絶たない。 仕事とは何なのか、一体みんなは仕事に何を求めてるのか、改めて考えさせられる。

サイモンシネックのゴールデンサークル

最近会社で見せてもらったTEDの動画を思い出した。Apple、ライト兄弟、マーチンルーサーキングなど、世界のリーダーは何が他の人とは違うのかと言った内容だ。

ざっくり言うと、大部分の人は、WHATにこだわる。目に見えて答えが出てるから。WHAT→HOW→WHYの順序で思考する。しかし実はそれでは人に訴求しない。世界のリーダーはWHY→HOW→WHATの順番で考える。まず、確固たる理念や理想があり(WHY)、それをどうやって実現するかを考えて(HOW)、その結果イノベーティブなモノやサービス(WHAT)が生まれ続ける。WHYを主張することが、人々に訴求する。 Amazonの場合も徹底した顧客第一主義、エブリシングストアの実現と言った理念や理想が常に中心にある。その理念がぶれないからこそ、新しいサービスが生まれ続け、人はAmazonに惹かれるんだということがわかる一冊だった。

その他、印象に残った言葉

  • アマゾンの文化は独特だ。会議でパワーポイントやスライドによるプレゼンテーションは行われない。そのかわり、6ページの意見書で要点を説明する。クリティカルシンキングを育むには散文形式の方がいいとベゾスは信じている。
  • 自分がどちらに行べきか考えるにあたり、ベゾスは後悔最小化理論なるものをひねりだす。「いろいろ悩みに悩んでいると、細かな部分にとらわれてわけがわからなくなったりします。でも例えば、80歳になった時、1994年の半ばという最悪のタイミングでウォールストリートの会社を辞め、ボーナスをもらいそこねたなぁと思い出すことはあり得ません。そんなの、80歳になってくよくよすることではありませんからね。逆に、このインターネットというもの、世界を変える原動力になると思ったものに身を投じなかった場合、あの時やっておけばよかったと心から後悔する可能性があると思いました。こう考えると・・・決断は簡単でした。」
  • 「それじゃだめだ。世界はものすごい勢いで変わってるんだ。僕も急がなきゃいけない。」
  • 私は、金の亡者ではなく伝道師の道を常に選びます。ただなんとも皮肉なのは、普通、伝道師のほうがたくさんのお金を儲けてしまうという点です。
  • 愛される企業について、愛想が良くて頼りになるだけでは、あるいは、顧客を中心に考えるだけでは不十分。重要なのは創意工夫をするところだと見られること、征服者ではなく探検者として見られること。
  • 一人の顧客が嫌な思いをした場合、その背景にはもっと大きな問題が隠れているとベゾスは考える。

アップル帝国の正体

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